整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科 大阪吹田市 前中整形外科クリニック

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院長コラム

大阪大学名誉教授 小野啓郎先生を偲ぶ

小野 啓郎先生が平成30年1月24日(水)ご逝去されました。亡くなられたのは24日午前11時52分、間質性肺炎のためです。87歳でした。ご略歴は1930年生まれで1955年大阪大学医学部を卒業、1972年大阪大学医学部整形外科教授、1993年大阪大学医学部長、1994年大阪大学医学部を定年退職された後、同年大阪厚生年金病院院長に就任。2004年に大阪リハビリテーション専門学校校長になられました。永年医学教育に携わり、その実績を踏まえて医学教育改革に関する活動・提言に従事、高齢社会における介護・福祉分野へのリハビリテーション専門技術導入を目指してこられたとのことです。晩年、市民対象のフォーラムで講演も積極的に行われていました。平成29年10月、菅本一臣教授が主宰された日本リハビリテーション医学会秋季学術集会に酸素吸入をしながら参加されたお姿を拝見しました。

最期まで学究に努められる姿勢に皆が感服致しました。去年体調を崩されJCHO大阪病院(旧大阪厚生年金病院)に入院されていましたが、ステロイド療法で症状が改善し一時自宅での療養に変えられました。仕事復帰への意欲を語られていたそうですが、その後状態が悪化し再入院するも治療の甲斐なくご逝去されたとのことです。平成30年4月22日に行われた「小野啓郎先生を偲ぶ会」には指導を受けた多くの先生が集まり故人の思い出が熱く語られました。

一般社団法人大阪臨床整形外科医会(OCOA)は、小野啓郎先生から創立以来大きなご恩を受けています。阪大教授時はOCOA顧問,退官されてから亡くなるまでOCOA名誉会員に就いていただきました。昭和61年11月29日の研修会では「首と肩の痛みとその治療」の演題で講演されています。昭和63年10月8日から10日まで開催された第15回日本臨床整形外科医会研修会(大阪)では「整形外科医の歴史と将来の展望」の演題で講演し、整形外科の歴史を振り返ると共に整形外科の直面する課題を語られました。平成10年のOCOA創立20周年記念では「高齢社会における脊椎症の新しい課題」として講演されました。脊椎症を高齢者には避けがたい「長生きのつけ」と看做すのは誤りで、手術の安全向上と病態解明が急務であると主張されました。

最近までOCOAの研修会で時々お見掛けいたしました。専門分野の講演や指導された先生の講演には顔を出される様子でした。数年前,同門開業医の会で「子供病院の歴史」について多くの資料を渉猟し1時間休まず立位で講演されたその体力、知力、精神力に参加者一同は驚きを隠せませんでした。

日整会広報室ニュース第77号平成21年4月15日「若き整形外科医へ」のコラムに
「prepared mind」という表題で寄稿されています。その中で「20世紀初頭のRockefeller Institute for Medical Researchは独立性の高い複数の研究室からなり(大学の講座制を忌み嫌った)しかも生命科学と医学のテーマが垣根を越えて追求され続けた。研究室リーダーあるいは先輩(mentor)にはノーベル賞受賞者が多かったが、グローバルに募った研究者の独自性が尊重された組織がアカデミズムであり、“精粋あるいは蘊奥(うんのう)”はそのような研究組織のacademic heritageの上にしか育たない」と述べられています。技術開発や創造的研究は「prepared mind」に訪れると強調されています。「prepared mind」は臨床を積めば育つのではなく、逆に臨床の場数を踏めば踏むほど、慣れが生じるものであり少々の「想定外」にも動じなくなると警告されました。 また、著作「医学がヒーローであった頃 ポリオとの闘いに見るアメリカと日本」の中で日本の医学には治療医学優位のヒエラルキーがあり、その中に「無謬の医学」が厳然とあった。「無謬の医学」観が失敗に学んで予防医学を発展させる機会を奪った。「無謬の医学」が居座った原因は「閉鎖社会の医学教育とそれを助長した医局講座制」「学位授与制度」「近代病院ならびに教育病院の未発達」であるとし基礎医学と臨床医学の大きな隔たりが科学的医学への体質改善を遅らせたと指摘されています。

大学でのカンファレンスでは小野先生はいつも論文、研究の独創性、新規性を追求され「Neuesは何か?」と言われていたと記憶しています。先生の研究者としての一貫した姿勢でした。厳しい修行に励む侍・武術者であり、先生の登場によってその場には背筋がキュンと伸びる、息が止まるピーンとした緊張感が自然と漂いました。商売人と違った安易に人を寄せ付けない目先の利得に目を奪われない先生であったと私は感じています。

三十歳代半ばで工学の専門分野を離れ、嫁や子供の生活のため医師になったprepared mindを持たぬ私は小野啓郎先生にとって対極の忌み嫌う存在であったでしょう。小野先生にとって私は歯牙にも掛けない相手でしたが先生から2通のお手紙をもらったことがあります。1通は大学での研修を終え公立病院での研修が始まった頃だったと思います。腰痛が主訴(だったか?)の患者が後日阪大病院へ行かれ、診察した小野先生からの直筆の手紙でした。「神経症状がある。診察はしっかり行うように---」という内容だったと記憶しています。患者の経緯がよくわからなかったことに戸惑うと同時に一介の研修医に先生から直接手紙を頂くことに恐縮しました。お言葉は今も心に残り続けています。2通目の手紙は去年、OCOAの役職についている私へのご依頼でした。活力ある長寿社会を目指してフォーラムなどを企画する「健康長寿プロジェクト21」推進機構に参画する先生から、「この企画にOCOAも協力すればOCOA並びにOCOA会員に寄与できるのではないか」というお誘いでした。検討中に先生の体調変化からかその話は立ち消えとなりました。私の整形外科医として幕が開いた時と幕が下りる時に奇しくも2通のお手紙をもらいました。何かの因縁を深く感じます。

小野啓郎先生の長年の研究、教育への取り組む姿勢は私をはじめ多くの門下生並びに広範な人々に絶大な影響を与えました。ここに改めて先生のご指導に衷心より感謝を申し上げます。そしてご冥福をお祈り申し上げます。小野啓郎先生 本当にありがとうございました。   合掌

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