整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科 大阪吹田市 前中整形外科クリニック

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院長コラム
虫に食われし我が身を顧みて

○この秋、突然私の耳に虫が住み始めた。「プチッ」とスイッチが入ったように感じてからだ。 気のせいだと無視していたがやはり間違いない。いまだに逃げず鳴き続けている。「ああ!夏が終わり人生の秋が来たのだな!」
整形外科医の自己判断では、「治らないよ!気にするな!」が治療だと思う。人の話には聞いていたが自分のことになると、なるほど鬱しいものだ。一年中の蝉の声

閑さや岩にしみ入る蝉の声  松尾芭蕉

○視界に蚊が飛ぶようになってからも久しい。蚊は無くなるどころかだんだん数が増え、大きく成長し群れている.舞妓さんの白い顔もシミつきである。 生身の舞妓の顔に接近できる甲斐性はないので写真の顔とのお付き合いある。そういえば、蚊が媒介するデング熱もエボラ出血熱の前に話は消え失せた。 同じく私の目に住む蚊もお隠れ頂きたいのだが、聞きうけてもらえそうにない。

叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな  夏目漱石

○1年前から脊柱管狭窄症がひどくなり、長年のジョギングの習慣も休止状態となった。 痛みは解消したが両下肢のしびれ、特に足底のしびれが残った。指先のしびれは以前から共存しているので、今では,両手両足はしびれたままである。 熱心に仕事をして物事に集中すれば消え去るからしびれ対策は「ボーとしないこと」である。 手足をこすり触覚を高めれば軽くなる。患者には「擦ってみて軽快することが判る人は私と同じしびれ仲間だ」と説明し納得してもらっている。
命乞いではない。

やれ打つな蠅が手をすり足をする  小林一茶

○十年ぶりに会った知り合いから,「髪が白くなっているのに驚いた」と言われた。 少しは自覚していたが改めて言われると気になる。還暦を過ぎた消費期限切れの老体なので当然のことではあるが、うれしい事ではない。 学生時代、解剖学の授業で白いものが混じる年齢は,鬢が40歳代、陰毛が50歳代からと聞いた記憶がある。 意識不明の救急患者の年齢推定で陰毛を覗いたら隣りの看護師に怪訝な顔をされた。いつも真面目だよ!

馬子唄や白髪も染めで暮るる春  夏目漱石 草枕

○私の体に色々不具合が出てきたとはいえ、正岡子規のような病床に臥す重病ではない。 現代医学の恩恵を受ければ子規の人生も変わっていただろうが、多くの作品も生まれなかったに違いない。 私が病に蝕まれても何も生まれない。お金が消えるだけだ。歩ける喜びに感謝しよう。

木老いて帰り花だに咲かざりき
行く年を母すこやかに吾病めり  正岡子規


○遺産相続問題、離婚、子供の夭逝などの不運に見舞われた一茶に比べれば、相続税も心配なく、古女房と不肖の息子に囲まれたわが身はめでたし、めでたし。 お釈迦様のおぼしめし。南無釈迦牟尼仏  南無釈迦牟尼仏

めでたさも一茶位や雑煮餅  正岡子規

○物忘れも社会生活上困ったものだ。人の名前を忘れて冷や汗をかく。 「先生!先生!」と言えば何とかなる職種ではごまかしも効くが、同窓会等になるとそうはいかず「出てこい!出てこい!」と念じる始末。 頭の中に情報は入力されるが、出力できなくなることが物忘れの真相らしい。 日頃、思い出す訓練が必要だ。診療で患者の名前がすべてスラスラ出てくれば大変尊敬されるだろうが、カルテで確認するインチキ癖がついており努力不足のままでは致し方ない。

夫婦,各々の両親に別れを告げし年に当たり
墓参り忘れし日々の根ふかし  前中孝文
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