院長コラム
JCOA学術集会抄録集編集後記
子供の頃、21世紀は鉄腕アトムが空を飛ぶ未来都市であった。しかし現在、地球上では、飢餓、テロ、地域国家の貧富格差、内線、地域紛争がいまだに蔓延し、バラ色の子供の夢は失われた。 パソコン、携帯電話などIT技術の進歩は目覚ましいが、壊された自然、絶滅した多くの動植物種、放射能などによる環境汚染を天秤にかければ、科学の利便性も陰ってしまう。 平成23年3月11日に起きた東日本大震災、福島原発事故は日本や世界の人々の思考の転換点となるであろう。昭和20年の空爆による国の焦土化、広島長崎での原爆による大量虐殺。その後にもたらされた戦後の激変と重なる。 世界がグローバル化し、世界の状況が我々整形外科医にも直接影響を与える時代となった。ユーロ圏の混乱、TPPの外圧は経済の不安定化となり、国民皆保険制度に変化をもたらすに違いない。このような状況下で、個々人がタコツボに入り、互いの連帯がなければ、座して死を待つのみである。ガラパゴス化では、多様性のある進化は望めない。 JCOAの役割の一つは、相互の親睦と交流を図ることであり、この学術集会は全国の会員、関係者が集まり、知識を深め、情報を交換する年1回の貴重な場となる。この学術集会を踏み台として、世界の中で誠実に強く逞しく生きる医療従事者になりたいものだ。 電力不足で節電した会場において、熱き議論に流す額の汗は、意識改革の狼煙となろう。 多くの人々の協力を得て、ここにようやく学術集会の抄録集を発行できる日を迎えたことに、改めて安堵の気持ちを抱いている。この抄録集を片手に、全国から多くの会員が結集することを強く期待するものである。 |