最近気になること
医学は神学,法学とならび専門職(profession)と称され、特権を付与された職である。その絶大な特権は、患者の利益に使うことが前提であり、自らの利益に用いるためではない。同時に専門職(profession)は、高い倫理と知識を備えなければならない。
近年、平等主義の概念からか、その特権を制限すべきとの風潮が散見される。繰り返されるマスコミの扇情的な医療に関する否定的な報道は、特権を制限せよと世論を誘導する。専門職の特権を制限することが正しいが如くの情報が流されていく。
政府、保険会社、マスコミなどからの狡猾な企てが専門職(profession)の我々に加えられている。専門医制度機構などというprofessionでない官僚が支配した組織が、学会専門医(専門職ではない)という美名の下に、我々を影で支配しようとしている。
開業医と勤務医との対立を煽り専門職(profession)を分断しようとする。IT化の名を借り管理医療を進め、特権を外部からのコントロール下に置く手段であるレセプトオンライン化は、ITに対応しない医師から専門職(profession)を奪う結果となる。
医療事故の原因究明と再発防止のためであるべき医療事故調査制度にprofessionではない者を参加させ、専門職の特権を制限しようとしている。医療行為の審査は、研修や経験の豊かな医療の専門者のみから受けその結果は、責任追及のために用いないのが世界の基準であることを思い起こしてほしい。
私は、これら一連の動きに強く反対する。専門職(profession)を死守しなければならない。特権を維持しなければならない。独裁者の特権ではなく、この特権は、自らに利益に向けず、患者の幸福を願うために執行するものである。またその特権の大きさに相当した倫理に裏付けされたもであるのだから、専門職(profession)にとって、特権の大きさは倫理の高さに通じ、苦しい試練として我々は耐えなければならない。
特権と倫理はお互いを支える同じ高さの2本の柱である。高い特権には高い倫理、低い特権には低い倫理しか対応しなくなる。高い特権に低い倫理は論外だが、低い特権に高い倫理を求めても実現することは不可能であろう。殉教者は少ないが故に殉教者である。倫理に殉教する凡人はいない。
地域医療、救急医療が荒廃し、小児科医、産科医、外科医が減少する今の現象は、専門職(profession)としての特権が虐げられた結果、患者の利益より自らの利益を優先する倫理の低下がその主因であると私には思われる。
「われわれは専門職(profession)である」とする、医療原理主義を広めていく必要がある。